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マルセイユ・タロット / Tarot de Marseille

マルセイユ・タロットとは?


マルセイユ・タロットの解説


シンボリックな絵柄が個性的で、数秘術やカバラとも対峙出来る古典的なタロット。シンプルな絵柄ゆえ、イマジネーションの幅も広く、視覚的、直感的に語りかけてくるのが特徴的である。

概略

マルセイユ・タロットは、78枚のカードで構成される伝統的なタロットデッキの一種です。17世紀から18世紀にかけてフランスで非常に人気を博し、現在でも制作が続けられています 1。このデッキは、多くの現代タロットデッキの原型となった基礎的なデッキの一つと考えられており、タロットの起源と発展を理解する上で歴史的、文化的に重要な存在です。マルセイユ・タロットが現代においても生産され続けている事実は、より新しいスタイルのタロットが登場しているにもかかわらず、その構造と象徴性が持つ不朽の魅力を示唆しています。単なる歴史的な遺物であれば、その生産は途絶えていた可能性が高いでしょう。現在も入手可能であることは、このデッキに対する継続的な需要と、その価値を認めるユーザーのコミュニティが存在することを示しています 1。この価値は、歴史的な意義、独特の構造、または解釈に対する特定のアプローチに由来するのかもしれません。

特徴

他のタロットデッキとの主な違いとして、特に小アルカナの数札(スートの1から10までのカード)に、人物や物語を描いたイラストがないことが挙げられます 。ライダー・ウェイト・スミス版など、多くの現代的なデッキとは異なり、マルセイユ・タロットの数札には、スートのシンボル(棒、剣、カップ、コイン)が、その数に対応した数だけ描かれています 。この点が、すべてのカードにイラストが描かれているライダー・ウェイト・スミス版のようなデッキとの大きな違いです 。小アルカナに詳細な絵がないことは、マルセイユ・タロットにおける解釈への異なるアプローチを促し、数秘術とスートの固有の意味に重点を置く傾向があると考えられます。視覚的な手がかりがないため、読み手はカードの基本的な要素である数とスートに頼って意味を導き出す必要があり、より抽象的で、潜在的により直感的なリーディングスタイルを示唆しています。これは、視覚的な物語に大きく依存するデッキを学ぶのとは、初期段階で異なるスキルセットが必要となる可能性を示唆しています。

マルセイユ・タロットの歴史

タロットカード自体は、15世紀初頭のイタリア北部で発明されたと考えられています。特にミラノで生まれた可能性が高く、その後フランス、スイス、北イタリアに広がりました。1499年にフランスがミラノとピエモンテを征服した際に、南フランスに導入されたと考えられています。マルセイユ・タロットの原型は、この時期に南フランスに伝わったと考えられています。イタリア・ルネサンス期の背景を考慮すると、初期のタロットの象徴性は、その時代の芸術的、哲学的、文化的潮流から影響を受けていた可能性があります。ルネサンス期は、知的および芸術的な繁栄の時代であり、これらの影響が、遊戯札を含む新しい形態の文化的表現に浸透していたとしても不思議ではありません。

17世紀から18世紀にかけて、フランスではタロットカードゲームが非常に人気となりました。特に17世紀と18世紀には、マルセイユがタロットカード製造の中心地の1つとなりました。1856年には、フランスのカード史家ロマン・メルランによって「マルセイユ・タロット」という名称が作られました。この名称は、マルセイユで作られた関連性の高いデザインの様々なデッキを指す包括的な名称として、フランスの占い師たちによって広められました。マルセイユがこの特定のタロットスタイルと関連付けられた主な理由は、類似のデッキが他のフランスの都市でも製造されていたにもかかわらず、主要な生産拠点としての役割を果たしたためです。この命名規則は、生産の地理的な集中を反映しており、マルセイユをこの特定のスタイルのタロットの認識可能な中心地としています。

現存する最古のマルセイユ・パターンとされるカードは、1639年にマルセイユのフィリップ・ヴァキエによって制作されました。17世紀後半には、ジャン・ノブレ(パリ)やジャック・ヴィエヴィル(ルーアン)などの製作者が重要なデッキを制作しました。1709年には、ディジョンのピエール・マドニエが最初の近代的なマルセイユ・タロットを印刷しました。このデッキは、ノブレとドダルのデッキとほぼ同じでした。1736年には、マルセイユのショッソンが、後のほとんどのデッキの原型となるデッキを印刷しました。1760年には、マルセイユのニコラ・コンヴェルがショッソンのデッキを直接コピーし、これがフランスの標準となり、現代の多くの人気のあるマルセイユ・タロットのモデルとなりました。マルセイユ・タロットのデッキの系統は、明確な発展と影響を示しており、後の製作者たちは先人たちのデザインに基づいていました。コンヴェルデッキが標準となったことは、特定の印刷業者が伝統を形作る上で重要な役割を果たしたことを示しています。マドニエのデッキがノブレとドダルのデッキと類似していたことからも、この相互のつながりが強調されます。

マルセイユとウェイト版の違い

大アルカナカード

カード名と番号】
「力」のカードはマルセイユ版ではXI番ですが、ウェイト版ではVIII番です。一方、「正義」のカードはマルセイユ版ではVIII番、ウェイト版ではXI番となっています 。また、「女教皇」はウェイト版では「高位女祭司」、「教皇」は「教皇(法王)」、「奇術師」は「魔術師」、「神の家」は「塔」といった名称の変更があります 。マルセイユ版のXIII番のカードは伝統的に名前がありませんがウェイト版では「死」と明確に名付けられています 。
象徴性】
マルセイユ版の大アルカナは、より伝統的で原型的な象徴性を持つとされ、宗教的、王族的、軍事的な人物が登場することがあります 。
一方、ウェイト版の大アルカナは、パメラ・コールマン・スミスによって描かれ、オカルティズム性、特に黄金の夜明け団の影響を強く受けています 。また、キリスト教的なイメージが一部変更されたり、追加されたりしています 。

小アルカナカード

【イラスト】
最も大きな違いは、小アルカナの数字札(エースから10)のイラストの有無です 。マルセイユ版では、数字札はスートのシンボル(棍棒、剣、聖杯、貨幣)が抽象的に配置されているのみで、人物や物語のような具体的なイラストはありません。一方、ウェイト版では、すべての小アルカナに人物や状況が描かれた詳細なシーンが描かれており、カードの意味を視覚的に表現しています。


【スートの名称】
スートの名称も異なります 。マルセイユ版では、バトン(棍棒)、エペ(剣)、クーペ(聖杯)、ドニエ(貨幣)というイタリア語のスート名を使用します。ウェイト版では、ワンド(棍棒)、ソード、カップ、ペンタクル(貨幣)という英語のスート名が一般的です。
【コートカード】
コートカードの構成は両デッキとも同様で、各スートにヴァレー(小姓/従者)、シュヴァリエまたはキャヴァリエ(騎士)、ダム(女王)、ロア(王)の4枚があります。ウェイト版では、ペイジ、ナイト、クイーン、キングという英語の名称が用いられます。

まとめ

これらの違いは、デッキの歴史的背景、制作された目的、そして象徴性の解釈に影響を与えています。マルセイユ版は、より伝統的で直感的な解釈を重視する傾向があるのに対し、ウェイト版は、詳細なイラストによって初心者にも理解しやすく、物語的な解釈がしやすい特徴があります。

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